
○ナジーム・ハメド 7RKO ●ウィルフレド・バスケス
<試合前の私の独断コメント>
アラブのプリンス、悪魔王子ナジーム・ハメドと、衰えを知らない無骨なファイターウィルフレド・バスケスの対決、またもやハメド絡みで面白い試合がマッチメークされた。
ハメドは英国で騒がれ出し、世界のベルトは取ったものの(WBOだし)実力には疑問符が付いた。何しろあのスタイルは今までの概念では強かろうはずが無い。しかし、マヌエル・メディナを退け、トム・ジョンソンを撃破して実力的にも認められた。そして、ケビン・ケリーも返り討ち。恐れを知らぬ世紀末の異端児を誰が止めるのか。
さすがにノーガードで顎を突き出した人をおちょくったスタイルでは、世界の一線級を相手に被弾しないのは難しく、実際ハメドがダウンする場面も見掛ける。(それがまたスリリングで人気に拍車がかかるが)しかし、ハメドは驚異的に目が良く、驚異的に動きが速く、驚異的に身体が柔軟な為、放たれたパンチの多くは外し、受けた場合も致命傷になる事はなかった。まさに驚異的なディフェンスの形をとらないディフェンスである。
攻撃は、これもノーガードで身体ごと飛び込み体重を乗せてパンチを打ち込んでくる。確かに破壊力のある必殺のブローではあるが、それにしても、よくもまああれで致命的なカウンターを貰わないものだと思う。やはり常人には理解出来ないものを持っているのだろう。
悪魔を向こうに回して戦うのだから、今度ばかりはバスケスは風向きが悪い。しかし、バスケスには此れ迄幾多の修羅場を潜り抜けてきたキャリアがある。そして、一撃で相手を沈める強打も健在だ。
予想となると、ハメドの変幻自在、支離滅裂な動きにバスケスはついていけず、フラストレーションが募り、中盤から後半にKOされてしまう様な気がするが、私はバスケスを応援したい。そして雄二の顎を砕いた様に、イエメンの血を持つ英国人の顎も砕くほどのブローの炸裂を期待する。
<試合後の考察>
バスケスの頑張りを期待したが、いかんせんスピードに差があり過ぎた。結果的に戦前の私の予想が的中した形となったが、やはり現段階での両者の実力差が如実に現れた結果と言えるだろう。
年齢的な問題も多分にあるが、元々バスケスはスピードが特に優れている訳ではない、それでも此処一番で相手を見切る瞬間的なスピードは一流だと思っていた。しかし、今までの対戦者と違ってハメドは、全てを凌駕するほどの絶対的なスピード差を老雄に見せ付け、そして嘲笑うかの様に押し潰した。
この日のバスケスは試合開始前から、今まで見た事の無いほど興奮し、緊張しているのが見て取れた。また、試合中も異常なまでにエキサイトし、苛立っていた。己の攻撃はた易く躱され、相手の動きに奔走され、そして強烈なブローを避けられない。苛立ちは自らへの叱責だったのだろうか。
悪魔王子、ナジーム・ハメド。この試合を見ると、全ての面に於いて彼は進化し、スケールアップしているのが伺えた。以前ほど闇雲に顎を突き上げて加撃する事もなくなったし、相変わらず変則ではあるが的確なフリッカージャブも見事だった。
見方を変えれば、はちゃめちゃな魅力がやや薄れたと言えなくもないが...
ハメドの驀進はいつまで続くのだろうか?連続KOで絶対的な強さを誇示し続けている悪魔王子だが、あのスタイルを見ると、私はどうしても「そのうち簡単に負けるのではないか?」と思ってしまう。しかし、反面「あの強打はだれも耐えられまい」とも思う。
そう、ハメドの今後も、彼のボクシング同様まったく予想は出来ない。ビッグ・マネーと生意気なイギリス人の首を狙ってほしいのは、玄人好みするベテラン、ケネディ・マッキニー。前回倒し合いを演じたケビン・ケリー。世界戦線再浮上を狙うマルコ・アントノニオ・バレラ、ジュニア・ジョーンズ、ウエイン・マッカラー。ルイシト小泉との対戦はほぼ消滅したのは残念だが、これからもハメドからは目が離せない。