98年9月5日 WBA世界Sフェザー級タイトルマッチ(両国国技館)
●崔 龍洙 12R判定 ○畑山隆則

<試合前の私の独断コメント>
畑山隆則の世界再挑戦の日がついにやって来る。場所は前回と同じ両国国技館、前回の悔しやを晴らすには最高の環境だ。勿論畑山自身も先のコウジ戦を見ても分かる様に格段の進歩を遂げている様に思う、死角は無い、そう思いたい、日本ボクシング界のスーパーホープに2度も苦汁を舐めてもらいたくはないし、事実世界の頂点に立つには充分の実力は備わっているのだから。
初戦は前半は畑山が飛ばし完全に試合を支配したが、中盤にカットした事もありやや失速、後半は崔に馬力で押し捲られ、最終的にはドローに終わっている。前半の畑山の攻撃はスピードに乗り実に見事だった。また、いつもながら王者の後半の追い上げも見事だった。両者ともに満点ではなかったが、自らの戦力をアピール出来た試合だったと思う。
初戦は両者ともある程度戦力をアピール出来て、そして結果はドロー。今回は当然ながら、その戦力をアピールさせなかった者、すなわち相手の特徴を封じた者が勝利をものにする事になるだろう。封じたと書いたが、裏を返せば己の戦力が相手のそれを凌駕すれば必然と相手の戦力を封じる結果となる。
具体的に言うと、畑山はスピード豊かな多彩でスキルフルな攻撃。相手を寄せ付けないジャブと長いストレート、接近した場合の内側からえぐるアッパー。こう書いただけでも畑山は殆どの状況に応じた攻撃スタイルを持っている。王者崔は唯一そして最大の武器である無尽蔵なスタミナ、相手に戦う気力を失わせるほどの圧倒的な突進力。そして、その無骨なスタイルを貫く強靭な精神力。
畑山がスピードと多彩な攻撃で王者を翻弄するか、また王者はプレッシャーをかけて挑戦者の動きを封じるか?これを顕著に行えればワンサイドゲームも考えられる。
しかし、実力の伯仲した両雄の対戦では片方の戦力が突出する事は考え難い、前述のそれぞれの特徴をより前面に出せた方に女神は微笑むのか。
各ポテンシャルを比較すると、どう考えても畑山の方が上に思える。前戦から比べても王者は現状維持に対し、挑戦者は1ランクアップしている。机上では挑戦者の負けは見えて来ない。しかし、ボクシングでもっとも大切なキャリアが崔にはある。数々の修羅場を潜り抜けている。侮れない。
若く勢いのあった辰吉がラバナレスに惨敗し、飛ぶ鳥を落とす勢いのシリモンコンが経験豊富な辰吉に敗れた様に...

でも、やっぱり畑山が勝って新チャンプになると思う。僅差の判定で。

<試合後の考察>
畑山、涙の戴冠!見ていた私も涙腺が緩みそうになってしまった。心からおめでとうと言いたい。そして、敗れはしたが崔にも賞賛の拍手を贈りたい。
試合はほぼ予想通りの僅差の判定になった、両者の実力を考えると間違い無く競った内容になるとは思ったが、正しく死闘、カッコ良さなど考える余裕もないほど、泥臭い“勝ち”のみに徹した、しかし見る者を感動させる試合だった。
今回の崔は前戦の轍を踏まぬ様、序盤から積極的に前に出た。畑山は崔の前進を持て余しぎみでやや劣勢、私は得意のフットワークを使って、左で出鼻を叩きたいと思いながら見ていたが、畑山陣営は打っては肩で押してクリンチ作戦で後半までのペース配分を念頭に置いて戦っていたと言う。畑山もまた前戦の轍を踏む訳にはいかなかったのだ。
両者決定的なポイント差が生じぬまま中盤へ、畑山の右目下が腫れが目立ち出すが緊張もとれて来たのか動きがスムーズになってきた、しかし崔の前進も相変わらず。結局最後までこんな流れで最終のゴング。私の採点では2ポイント(減点1含む)畑山リード、「勝ったかな」と思ったが正式発表までドキドキの時間だ。そして「勝者、畑山」のアナウンス、喜びに涙する畑山、柳先生に抱き着いて号泣。「ボクサー畑山」にとって親父と言ってもいい柳先生との二人三脚、こちらまで目頭が熱くなる。
ボクシングファンとして畑山は勿論だが柳 和龍トレーナーにも感動を有り難うと言いたい。そして、これからも最高のコンビで世界で暴れ回ってほしい。

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