98年4月29日 WBA世界Jr.バンタム級タイトルマッチ
○飯田覚士 12R判定 井岡弘樹●

<試合前の私の独断コメント>

王者飯田覚士に井岡弘樹が挑む今回の日本人対決、ビジネス重視のマッチメークにボクシングファンから非難の声が多く上がっている様だが、此処では純粋に二人の勇者に目を向ける事にする。
同世代の二人だが、歩んで来た道程、現在置かれている状況は全く対照的と言っていいほど違っている。若くして世界の頂点を極めた男と、大器晩成非凡な努力で世界を掴んだ平凡な男。苦汁を舐め続け後の無い男、栄光の絶頂にいる男。しかし、二人ともボクシングに対する情熱、真摯な態度は共通している。
ボクシングスタイルを比較すると、何れもアウトボクサー、はっきり言って非力なテクニシャン、似ている。しかし、名伯楽イスマエル・サラス氏は井岡にインファイトさせると公言している。「ファイター井岡」想像出来ない。彼がファイターに成り得るのだろうか?名王者柳を翻弄させた左ジャブが健在ならば、井岡に充分勝機はあると思うが。
飯田とすれば、井岡がインファイトで来てくれた方がカウンターが取り易く、むしろ歓迎ではないだろうか。
現在の両者の実力を考え、戦力を総合するとやや飯田が上、経験はやや井岡が上、といったところか。数字上の経験は井岡の方が大分上回っているが、飯田は経験を生かせるタイプである。世界戦3回はかなりのキャリアになっているはず。
飯田が試合をコントロールして中差から大差の判定勝ちが有力だが、井岡が打ち気に逸るとKOも考えられる。井岡は飯田を慌てさせる展開に持ち込みたい、サラス氏はそれを狙っているのだろう。飯田から冷静な頭脳を取れば恐い相手ではない。
心情的には井岡の三階級制覇を見たいが...


<試合後の考察>

結果的には競った内容にはなったが、決して好試合と言えるものではなく、両者ともに決定打に欠け、非力さばかりが目立つ、とても世界戦とは思えない拙戦に終始した。
特に飯田は本来の理に適った動きが見られず慌てる場面も多く、世界王者としての威厳を示す事は全く出来なかった。対する井岡もインファイトを意識するあまり、正直に中に入り過ぎてカウンターを浴びた。非力な飯田だから立っていられたものの、対立王者のペニャロサ、タピアなら間違いなく倒されていただろう。
これからの二人についてだが、まず飯田から、ハッキリ言って飯田は戦力的には国内のトップレベルの選手と大差はない。しかし、それを補うだけの冷静な頭脳とスキルを持っていると思っていた。しかし、今回の様なドタバタした内容を見せられると、現段階で既に日本王者の名護明彦の方が”上”ではないかと思われる。次戦はトップランカーとの指名戦が予定されている様だが、戦力の上積みが無い限り極めて厳しい戦いになる事が予想される。
井岡については、マイナス材料の多いなか善戦したとは思うし、急造ファイターとしては及第点なのかもしれないが、世界王座奪取に失敗したという事実は厳粛に受け止める必要があるだろう。善戦はあくまでも善戦であって勝ちではない。それでも彼は現役を続行すると言う。中には井岡の現役続行を快く思わないボクシングファンも多いと思うが、私は彼自身が納得出来るまで夢に挑戦し続けてほしい。但し、世界王座奪取が可能かと言うと、非常に厳しい現実があるのは否定出来ない。

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