
●飯田覚士 判定 ○ハスス・”キキ”・ロハス
<試合前の私の独断コメント>
今回の対戦は日本人王者の飯田覚士よりも、挑戦者のヘスス・“キキ”・ロハスに注目している。あれはもう5年位(?)前になるのか、私は渡久地対ロハス戦をホールで観戦した。渡久地は私の最も好きなボクサーの一人で、増してや長いブランクからの復帰戦、この日のチケットも埼玉池田ジム(当時所属)で直接彼を激励し購入する入れ込み様だった。実は渡久地の復帰戦の相手は、前戦で勇利に何度も倒されながらも善戦した韓国の陳のはずだった、しかし陳の負傷で対戦相手が急遽ロハスに変わるという経緯があったのだ。かつて代役として渡久地と戦ったロハスが、今度は渡久地の代役で世界挑戦する、何とも因縁深い気がする。
故池田会長から渡久地の相手がロハスに変わったと聞かされた時、がっかりしたのを記憶している。正直私は“ロハス”と聞いて「ロートルの元世界王者か!名前があって勝ち易い相手を選んだな」と思ったものだ。しかし、蓋を開ければ(渡久地のブランクも大きかったとは思うが)一方的にロハスは攻め込み“格”の違いを見せ付けた形で終わった。ロハスは決してロートルではなかった。
昔話しに花が咲いてしまったが、普通に考えるとその渡久地戦からでも大分時間が経っているロハスが、それ以上に強くなっているとは考え難い、しかし、彼には貴重な経験が山ほどある。最終的には判定で飯田が王座を防衛するとは思うが、決してイージーな相手ではないだろう。ロハスは結構重いパンチを持っているので、それを飯田のボディにまとめて勝機を見出したい。ロハスには渡久地の分まで(本人はそんな事は全く思っていないだろうが)頑張ってほしい。
<試合後の考察>
飯田の右肩脱臼で試合は思わぬ展開になってしまった。
本来がアウトボクサーの飯田にとって右を封印されると言う事は、相手への加撃が減る事以上に、試合自体をコントロールする術を失う事を意味する。
例えば、全盛期のヘナロ・エルナンデスは慢性右拳痛に悩まされてはいたが、ジャブを主体とする左一本で容易に試合を支配していた。しかし、仮に右が健在で左が使えない状況で同じ結果を導き出せたとは思えない。
それほどに強打を売りとしないアウトボクサーにとってリードブロー(ジャブ)が放てないのは致命的な欠陥となる。
5Rに素人目にも分るほどに肩が外れた。(そのラウンド内に一応戻ったらしいが)誰が見ても絶対絶命。しかし、続く6Rに渾身の力を込めて飯田はラッシュした。ダーティなロハスのお株を奪う我武者羅な攻め、余力が残っているうちにラッキーパンチでも何でもいい”当たってくれ”そんな悲痛な叫びが聞こえてきそうな愚直な攻撃。老獪なロハスはまだ余裕があり、起死回生はならない。
この時点で私は(他の人もそうだと思うが)、飯田が立ったまま試合終了を迎えられるとは思っても見なかった。近いラウンドでベネズエラ人の軍門に下る事は確実、なかば諦めながらの観戦を決めこんだ。
この後、飯田が凌いだ、我慢した、ロハスが攻め切れなかった、策が無かった、等色々言い方はあるが、結局判定に持ち込まれた。結果は明白、ロハスの二階級制覇なる。
プロは結果が全てだが、この試合は飯田にとってはあまりにもアンラッキーだった。逆に新王者のロハスは極めてラッキーだった。手負いの飯田を仕留める事の出来ないロハスは、明らかに胸を張って王者と言える実力は備わっていない。
ロハスにはビッグなクリスマス・プレゼントとなったが、名護を始めコンテンダー達にも美味しい王者の誕生と言うクリスマス・プレゼントが届いた。