97年11月22日 WBC世界バンタム級タイトルマッチ(大阪城ホール)
●シリモンコン・ナコントンパークビュー TKO7R辰吉丈一郎

<試合前の私の独断コメント>
辰吉にとって非常に厳しい展開が予想される。はっきり言って辰吉には、往年の「キレ」が感じられない。身体の「キレ」、パンチの「キレ」が先日のメディナ戦を見た限りでは見当たらない。辰吉の全盛期と言っていいだろうリチャードソン戦の時などは、まさに躍動感に溢れ、その勢いに乗った加撃は見る者をまで圧倒したものだが...
今回の対戦相手のシリモンコンは、皮肉にも辰吉から消え去ってしまった「勢い」が最高潮の選手と言えるだろう。20歳と言う若さを武器に恐いもの知らずの強さがある。また、テクニック的にもオーソドックスなスタイルから放たれるシャープなパンチは、相手のピンポイントを打ち抜く正確さを持っている様に思う。ブエノを葬り去った一撃は実に見事だった。体も大きく、辰吉を全てで圧倒する展開が予想される。
辰吉が勝機を見出すとしたら、シリモンコンの最大の武器である「若さ」と「勢い」を逆手に取って、「焦り」「狼狽」に変える事だ。勢いに乗って出てくるタイ人の出ばなをカウンターで叩ける様だと面白い。
相対的な戦力を考えると辰吉不利は否めないが、シリモンコンはサラゴサから比べるといやらしさはないし、ラバナレスの様に荒々しくもない。辰吉にとっては比較的組み易い相手かも知れない。順当にいけば中盤から後半にかけてシリモンコンのラッシュで勝負が決する様な気がするが、何れにしても辰吉には悔いの残らない戦いをしてほしい、そして
是非勝ってほしい。辰吉の戴冠を祈る!

<試合後の考察>
「男、辰吉」あなたには本当に脱帽です。解説の浜田さんも言っていたが、周囲(私も)の予想は「圧倒的不利」。戦力、勢い、若さ、どれを取ってもシリモンコンの勝利は不動だと思われていた。そんな周囲の声を嘲笑うかの様な完璧に近い試合運び、追い詰められたこの状況下で自らのベストバウトをして見せる「辰吉」って奴はやっぱり天才だ!
この日の辰吉は初回の入りから左ジャブでシリモンコンの出ばなを叩きペースを取り、尚且つ、全盛期を思わせるほどスピードがあり実に軽快。1R終了した時点で期待が膨らんできた。
試合展開の詳細は、このサイトを覗く様な方には不要なので割愛するが、5Rに1度ダウンを取って、期待は「いけるぞ!」と確信に完全に変わってきた。そして迎えた7R、開始早々から決死の覚悟で向かってくるシリモンコンの攻撃に被弾する辰吉を見て、不吉な予感がしてきたその瞬間必殺のボディブローがタイの若者を悶絶させた。
都合で夜中にビデオで見たのだが(勿論結果は知らない)、辰吉勝利の瞬間には周りの迷惑も考えずに両拳を突き上げて絶叫してしまった。そして涙が出てきた。震えた、感動した。正直、最近震えるほど感動する試合は記憶に無い、
「辰吉」この感動を有り難う!
試合そのものを考察すると、手前味噌になるが戦前のコメントにもある様に、シリモンコンの出ばなを叩き、恐れを知らない若武者に「焦り」出させる展開にしたいと思っていたが、その通りに進み、そして勝つ事が出来た。最終的にはボディーブローで痛めつけ、仕留めた訳だが、私はそれ以上にシリモンコンの勢いを止めた「左ジャブ」が勝利に導いたと思う。
対するシリモンコンついては、ここまで全く順調に階段を駆け上ってきて(よく分からないが)あまり打たれた事が無いのかもしれない。確かに辰吉のボディは的確で執拗で強力だったが、それを差引いても少し脆すぎる様な気がする。(減量の影響?)何れにしても、もうバンタムでファイトする事はないだろう。



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