
●オスカー・デラ・ホーヤ 判定 フェリックス・トリニダード○
<試合前の私の独断コメント>
キャッチフレーズの「1000年に一度の戦い」はやや大袈裟過ぎるとは思うが、それにしても最近では一番のスーパーファイトである事は間違い無い。とかくボクシングの世界では、ヘビー級が特化し注目されるが、少なくとも今回の中量級の一戦は、ホリフィールドVSルイスのヘビー級統一戦より何倍も高い次元のファイトが期待出来る。
この一戦を前に、米国は勿論、我が日本でも数々の評論家やボクシング関係者が自らの意見、予想を述べているが、その何れもが決定的なポイントを突き得ないものとなっている。それは決して彼ら有識者と言われる人達が無知、無能な訳ではなく、デラホーヤ、トリニダード両者ともがあらゆるファクターで極めて高い水準に位置し、甲乙点けがたいものとなっているからである。従ってこの試合に限って言えば、予想自体が無意味なもので、それでも敢えて予想もどきを行うとなると、それは只のボクシングファンのウキウキ心躍らせた戯言に他ならない。しかし、その戯言がこの一戦に向けた皆の期待の大きさと言える。
さて、そこで筆者の戯言をひとつ。
んーー難しい。っと言うか、まずはどんな展開になるのかで悩んでしまう。おそらくデラホーヤがその豊富な引出から、どの戦術を選択するかによって、序盤の展開は決まってくるだろう。
戦闘的なファイターで来るか?ボクシングをして様子をみるか?筆者は出だしはボクシングをすべきだと考える。
実力的には互角と誰もが認めてはいるが、人気、待遇面ではゴールデンボーイの後塵を拝する形になっているティトとしたら、その屈辱をリング上で、KOで晴らしたいと息巻いているはず。(短絡的すぎる?)勢いを駆って攻め込んでくるトリニダードと、真っ正面から向かい合うのはデラホーヤにとって得策とは思えない。序盤はボクシングで距離をとりながら、対峙して初めて分るであろう相手の真の実力を推し量る時間に費やしてもいいと思う。但し、この時間に於いても、明らかなエスケープだと逆にトリニダードに攻め込む機会を与える事になるので、足を使いジャブを使い、試合自体は己でコントロールしたい。
デラホーヤが序盤を自分のペースで乗り切る事が出来たなら、中盤からはゴールデンボーイ優位に試合を進める事が出来るかもしれない。しかし、どんな展開になってもトリニダードのパンチは脅威だし、クォーティ戦での被弾が仮にトリニダードから被ったものだとしたら...最終のゴングが聞けたかは定かでない。
対してトリニダードは、今まで通りの戦いをすればよい。特にデラホーヤを意識した戦術は必要無い。彼の最も優れている点は、その怒涛の攻撃力で、言い換えればその攻撃力を使いきれるか否かで勝敗の行方が決まってくると言ってもいいのではないか?
デラホーヤの早く鋭いジャブと長い距離からの伸びるストレートで出鼻を挫かれ、デラホーヤが余裕を持ってボクシング出来る様だと、意外とあっさりとプエルトリカンがマットに這うかもしれない。
自信は無いが筆者の予想もどきの結論としては、戦術、テクニック、経験に長けたデラホーヤが中盤までは試合をコントロールするものの、最終的には攻撃力では一枚上、ナチュラルなウエルターウエイトのトリニダードが、力でゴールデンボーイの長く伸びた鼻をへし折ると予想する。
<試合後の考察>
この一戦に対する期待があまりにも大きかっただけに、その分失望も大きなものになってしまった。
戦前からデラホーヤはボクシングをする事を強調し、不用意な打ち合いは挑まないと公言していた。強打のトリニダードと対戦するにあたっては、足とジャブを有効に使ってボクシングをする事が、デラホーヤにとって最も「勝利」を導くのに適した戦略だとは筆者も考えていたが、まさかここまでアウトボクシングを徹底すると考えた者は少なかっただろう。
1Rは両者の睨み合いが続き、ほとんど打ち合いらしきものは無く、これが逆に大一番の緊張感を煽る。しかし、ラウンドが進むにつれて、それは物足りなさに変わっていった。
デラホーヤは相変わらずサークルを続け、ブーイングを浴びない程度のパンチを繰り出す。トリニダードは傍目にも堅さが分るほど、動きにいつものスムーズさが無い。
盛り上がりには欠けるが、それでも「このままでは終わらないだろう」との期待を残し、序盤はゴールデンボーイが予定通り、ポイントをピックアップした。(と筆者は見た)
しかし...最終までこの展開が続いてしまうとは。
中盤以降プエルトリカンのアタックも見られる様になるが、それでも本来の爆発的な攻撃は封印されたままだ。そして、甘いマスクのメキシコ系米国人は、ファイナル2Rはリング上で“ダンス”を披露した。そして終了のゴング。筆者の採点ではドローだった。
公式の採点がマイケル・バッファによって発表される。コールされたのはプエルトリカン・トリニダード。2−0majority decision、僅差ではあるがデラホーヤは敗れた。
何故デラホーヤは敗れたのか、何点か疑問が残る。
陣営は最終2Rを残した時点で、ポイントで上回れると考えて安全運転を指示したのか?
生とTV画面とでは印象が大きく違う事は承知しているが、それを差し引いても安全運転で逃げ切れるほどのポイント差があったとは到底思えない。ポイントの読み違いがあったとすれば極めて低レベルのmistakeを陣営は犯した事になる。
デラホーヤは戦略として“最後まで”outboxを選択したのか?
勝つ為の戦略としてoutboxは正しい選択だと思う。しかし、それは有効な場合に実践すべき戦術であって、終始行うとなると若干疑問が残る。状況に応じて好戦的な選択があっても良かったのではないか。っとここで、もしかしたらデラホーヤは止む無くアウトボクシングを行ったのではないか?という疑問が浮上する。好戦的にすべき状況でも、トリニダードのプレッシャーに押されて、出る事が出来なかったのではないか?真偽は分らないが、もし最後に見せたダンスが苦し紛れのものだったとしたら、ゴールドメダリストの“完敗”だったという事になる。