○サマン・ソー・チャトロン 4RKO
●八尋史朗
<試合前の私の独断コメント>
八尋、3度目の正直で戴冠なるか!? はっきりいってかなり厳しい戦いを強いられるだろう。
私は八尋が初めて世界挑戦(決定戦)したレオ・ガメス戦をホールで観戦したが、あの頃から今でも彼の「線の細さ」が気になってしょうがない。単に細身で長身というだけでなく、ボクサーとしての身体全体の“力”が不足している様に思えてならない。確かにぐいぐい押していくファイターではないし、明らかにボクサータイプだが、私の目にはひ弱いボクサーに写ってしまう。
対するサマンはプレッシャーをかけて強いパンチを振り回す突貫小僧タイプ。八尋とは対照的に筋骨隆々のマッチョな肉体を持ち、チキータを大逆転KOに葬った強打は軽量級離れで凄まじい破壊力がある。
試合展開を予想すると、典型的なファイター対ボクサーの対戦なので、サマンが押し切って八尋に強打を見舞ってKO勝ちするか、もしくは八尋が最後までアウトボックスして判定で勝利をものにするかの何れかだと思う。パンチ力を考えると八尋のKO勝ちは、まず考えられない。
実はこの両者、タイで1度ベルトをかけて戦っている。この時は最初からサマンが押し捲り、終始八尋にプレッシャーをかけ続けた。中盤から八尋がやや盛り返した時に、その八尋のわずかなカットで試合は突然終わってしまった。(本当に小さな傷だった。)八尋にしてみれば、もやもやが残る不完全燃焼で止める(引退)に止められない状態で今まで来たのだろう。しかしながら、この試合を続行していても勝利は難しかっただろうし、今回も同じようにサマンが追い回し、そしてKOする展開が濃厚だと思う。
八尋が勝つ為のキーポイントは二つ、“左ジャブ”と“足”。かつて井岡弘樹が韓国の名王者柳をアウトボックスし切った試合をもう一度見たい。
<試合後の考察>
この試合はTVのダイジェストで3R、4Rしか見ていないので、それまで八尋がどの様に戦ったのか不明だが(なかなかよかったらしいが)、3R、4Rを見た限りでは格の違いを見せ付けられた形になった。
サマンの強いプレッシャーに八尋が抗い切れず、仕様が無く打ち合いに挑んでしまった様に見えた。戦前に八尋自身も「前回と違って今回は自分のパンチが当たる距離でも戦う」と公言していたが、残念ながら作戦とは違った形での打ち合いに持ち込まれてしまった。本来なら、あくまでも左ジャブを突きながら、隙を見て踏み込んで右ストレートを打ち込みたいところだったろう。
結果的には八尋に本来のアウトボクシングをさせず、プレッシャーで逃げ場を塞いだサマンの力強さだけが印象に残った。
サマンの強さはこのクラスでは傑出している様に思うが、下のクラスから無敵の刺客がその王座を狙っているらしい。そのメキシカンとの戦いは、サマンにとって非常に難しいものになるだろうが、もしかしたらチキータ戦の再現があるかもしれない。
敗れた八尋はこれでグラブを壁に吊るす事になるのだろうが、さわやかな好ファイターがいた事をボクシングファンは忘れないだろう。