Maenad's Lance メナードのランス  (アイテム)
 BCFなどに登場する、ヴァルキリー最強の武器のことです。見出しの日本語表記ですが、Maenadの読みとして「メナード」が最適と結論付け、このようにしました。SFC版の「ミーナッド(英語読みそのまんま)のランス」など、他にも様々な読み方があります。
 Maenadとはローマの酒神バッカス(バッコス)の信女のことですが、ラテン語ではMaenadesと書き、ローマ神話を語る世界では「マイナデス」と読むのが普通のようです。普通この信女は集団として語られるので、単数形Maenas「マイナス」はあまり一般的ではありません。英語の綴りも複数形から来ているようです。英語から転じて、「メナド」「メナード」という読み方も少数派ながら存在します。以上からすると、この武器は「マイナデスのランス」、単数形を明確にするならば「マイナスのランス」と呼ぶのが妥当でしょう。ただ後者は呪われてそうで嫌ですね。
 「メナード」と言われて真っ先に思い出すのはメナード化粧品です。社名はMenardと綴るので関係ないのだろうと思っていましたが、ホームページに「Maenadから採った」という記述を発見しました。そういうわけで、様々な表記のうち、日本語に一番浸透しているのは「メナード」の逆転勝利。これをもって「メナードのランス」を見出しに据えることにしたわけです。

 さて、北欧神話のヴァルキリー(ワルキューレ)の武器の名前に、なぜギリシア・ローマ神話の信女の名前がついているのでしょうか。どちらも異教paganだから、という以上の共通点があるような気がして考えてみましたが、一応一つつながりを思いついたので報告しておきます。
 つながりというのは、ニーチェFriedrich Wilhelm Nietzscheです。彼が『悲劇の誕生(Die Geburt derTragodie)』を著したのが1872年。ここで彼は、陶酔に満ちた躍動的、厭世的なギリシア美術の一側面を提示し、これを有名な「ディオニソス的」という言葉で呼びました。ご存知の通りディオニソスはバッカスのことでして、酒を飲むなどしてトランス状態になる「酒神信女(岩波文庫、秋山英夫訳)」のことは、何度か文中にも言及されています。
 この本の主旨はワグナーWilhelm Richard Wagnerの楽劇を、「ギリシア悲劇衰退以来の芸術の復興」として賛美することにあるのですが、ちょうどこの本の発行直前の1870年、『ニーベルングの指輪(Der Ring des Nibelungen)』の第一夜『ワルキューレ(Die Walkure)』がミュンヘンで初演されています。文中でタイトルこそ確認されないものの、「ブリュンヒルデ」の名やストーリーは引用されており、ニーチェが意識しているのは疑いを入れません。
 以上より、ニーチェにあってはメナードとヴァルキリーは、非ソクラテス的、非キリスト教的、非個人主義的な存在ということで同類なのです。

 しかしながら、やはりヴァルキリーは「異教風女戦士」の一言でくくられる存在のようです。円卓の騎士風でキリスト教的なロードと区別する意味もあるでしょう。この武器の持ち主であるブリゲルド・ウォルタン(この表記にも諸説ありそうですが)Brigerd Woltanの墓碑銘を見ると、Brigerd DansWolten, the High Maenad of Roseとあります。Brigid、Brynhild、Wotanといったゲルマン臭い名前が見え隠れしていますが、正体は掴めません。そして称号の方は、ギリシア・異教ローマ的なMaenadの他に、Roseという思わせぶりな単語がついています。「薔薇」は異教というより異端の匂いがしますね。あと個人的に気なっていたのですが、ムアコックMichael Moorcockの『薔薇の復讐(the Revenge of the Rose)』(1991)はBCFの発売(1990)より後なので、関係ないでしょう。
 外伝シリーズを見ると、「聖なる槍」「ジャンヌの槍」「女神の胸当て」というヴァルキリー専用アイテムが登場します。「女神」はともかく、「聖なる」「ジャンヌ」はキリスト教っぽいのでどうかと思いました。名前的には女ロード専用にすればいい感じですね。あと、数年前にジャンヌ・ダルクJeanne d'Arc (Joan of Arc)が実際に使った鎧が発見されたとか聞いたんですが、本当でしょうか。やはり聖遺物扱いになるんですかね。「ジャンヌの鎧」にしておけば、村正と並び、実在の銘入りアイテムになっていたかもしれません。
update: 20000624


 
Maelific ( Maelifics ) マイルフィック  (モンスター)
 綴りから判断するに、「メイリフィック」というのが一番英語の発音に近い表記だと思います。アクセントは「リ」にあります。多分。
 一般に「混乱をもたらす者」を意味する語だとされています。maelificという単語はまず、horrificやterrificという単語と同様に、「maelをもたらす」という意味の形容詞、あるいはscientificやpacificという単語と同様に、「mael的な」という意味の形容詞だと考えられます。そこから派生した固有名詞ということで、「maelをもたらす者」とか「mael的な者」とかいった意味に解釈できます。では、maelにはどういう意味があるのでしょうか。
 maelという単語を見て、まず思い付くのはmaelstromという言葉です。「メイルシュトロームMaelstrom」とはノルウェー、モスケンMosken沖に発生する大渦巻きのこと。直径5マイルというので、日本の「鳴門の渦」とは趣が違うようです。ヴェルヌJules Verne(1828-1905)、ポーEdgar Allan Poe(1809-1849)の小説から英語圏で一般化し、maelstrom(小文字で始まる)は「大渦巻き」「大混乱」などの意味があります。
 maelstromという単語自体は古いオランダ語で、maelとstromに分解されます。maelは「臼(うす)」、stromは「流れ」の意味で、合わせて「臼のような(回転する)流れ」ということになるでしょうか。英語に直すと「millstream」といった感じでしょう。また、言い伝えでは船から魔法の臼が落ちたことになっていて、これが海底で勝手に回っているので海上に渦ができるとか、塩をひいているから海水が塩辛いのだとか、そういう説明的昔話もあるようです。
 つまり、maelificは「臼をもたらす者」か「臼のような者」なのです。maelstromは「大混乱」ですが、mael自体にもその意味があることにして、ようやく「混乱をもたらす者」になります。ただし英語にmaelで始まる単語は他にないので、maelからmaelstromへの飛躍は大きいものではありません。このモンスターを命名したのが誰かは知りませんが、おそらく「maelstromをもたらす者」という意味で付けたのでしょう。

 ところが昨今では、「臼」自体で「災厄、大災害」を象徴することができるようです。この主張の原典は、おそらくハンコックGraham Hancockの『神々の指紋(the Fingerprints of the Gods)』(1995)でしょう。世界の神話、伝説には、臼を壊したり、樹を切り倒したりしたことが原因で、大洪水が起こったり、空が落ちて来たりするストーリーが多々見うけられます。これは世界各地の人類が、有史以前に経験したポールシフトの記憶を伝えるものだというわけです。「臼をもたらす者」も馬鹿にできません。正確には「臼を壊す者」かもしれませんが。
 ただし、さらにその元ネタになったと思われる『ハムレットの臼(Hamlet's Mill)』(1969) Giorgio de Santillana, Hertha von Dechendも読んでみましたが、ここにはポールシフトの話など一言も書かれていません。またこの本によれば、メイルシュトロームの先に広がるという冥界も、南半球の星空のことだそうです。味気ない話ではありますが、事実とはそんなものでしょう。

 さてもう一方で、一部のファンにはマイルフィックは古代メソポタミアの魔神パズズPazuzuと同一視されています。これはFC版の末弥純によるイラストが、パズズを描いたものだった、というのが起源と思われます。一部のファンと書きましたが、日本では「マイルフィック=パズズ」説はもう通説であり、外伝2での記述は決定的です。「パズズ」と聞いて「マイルフィック(メリフィックでもいいですが)」と答えないようではWizファン失格だ、と言われてもおかしくない情勢ですので、覚えておきましょう。
 パズズは熱風の魔王で、女性や子供に病気をもたらす存在でもありました。子供に持たせるパズズを象った病気除けのお守りが発掘されていて、イラストはこれらの像を元に描かれているようです。また、パズズは映画「エクソシスト」シリーズに登場する悪魔として有名です。『エクソシスト(the Exorcist)』(1973)と『エクソシスト2(Exorcist II:the Heretic)』(1977)ですが、パズズの名前が出てくるのは2作目の方で、しかもその中ではバッタだかイナゴだかの大群による虫害の神(悪魔)として描かれていました。逆に1作目では、冒頭の部分でパズズの石像が登場しています。イラストとそっくりですのでぜひご覧ください。あと、このシリーズは3作目もありますが、パズズの話は出てこなかったように思います。

 たしかに、パズズは当地では「混乱をもたらす者」かもしれません。が、北欧から中東までは随分と距離があるなあと思います。北米英語圏の人にとって、maelというのは北欧テイストな単語だと思いますので、そちらの神格を引っ張ってきた方が良かろうかと思います。
 また、マイルフィックが不死系であることを考慮すれば、メイルシュトロームが冥界への入り口であるという言い伝えを活かすべきでしょう。不確定名もunseen beingなので、幽霊のような姿が正しいのではないでしょうか。とはいえ、幽霊といってもいろいろです。『ハムレットの臼』を読んでしまった筆者にすると、『ハムレット(Hamlet)』(1600-01)の幽霊しか思いつきません。先王ハムレットの幽霊は、甲冑に身を固めた武人の姿で出ました。臼は王子の方に帰属するらしいですが、いずれにせよ剣を手にした戦士の幽霊ということになります。
 以上はあくまで代案の一つとしてお考え下さい。違う幽霊でも良いし、パズズでも構いません。ただ、北欧で行くなら連れのジャイアントゾンビGiant Zombiesは描きなおした方が良いと思います。ゾンビがでかいだけのモンスターではなく、北欧風巨人族がゾンビになった姿に変えるべきでしょう。また北欧神話では、海の王である巨人(エーギルAegirなど)の娘2人(一説に9人)だけが、問題の魔法の臼を回せることになっています。彼女たちは海上の波を擬人化したものだともいいますが、巨人の娘は巨人。なんと、ジャイアントゾンビは実は女だったのです。
update: 20001016


 
Margaux's Flail マルゴーのフレイル  (アイテム)
 マイナーなアイテムで恐縮です。この呪いつきフレイルが登場するのは、LOLのみだと思います。

 マルゴーMargauxとはフランスにある村の名前です。一介の農村が世界中に名前を知られているのは、ワインの産地だからにほかなりません。ボルドー地方メドック地区は、カベルネソーヴィニオン種を中心とした赤ワインの産地として知られています。中でもシャトー・マルゴーは「気品のある味わい」「最も女性的なワイン」「ワインの女王」などと絶賛されています。
 シャトー・マルゴーは750mlの瓶が1本数万円する高級ワインですが、日本での人気は上々。一時期は、輸入した分は即座に売れてしまう人気商品だったそうです。人気が出るきっかけとなったのは、なんといってもテレビドラマ『失楽園』(1997)でしょう。物語の終局、主人公である二人の不倫男女は、出会いの場所ローマでワインに青酸カリを混ぜて飲み、抱き合ったまま死んでいくのです。渡辺淳一の原作にも記述があるのですが、この時に使うワインがシャトー・マルゴーでした。この作品は当時おじさんおばさんの間で大流行し、おりからのワインブームも手伝って、マルゴーは飛ぶように売れたのでした。自分では買わない値段だし、話題作りにもなるので接待には最適だったことでしょう。川島なお美のハダカを思い浮かべながら飲み、飲んだら「失楽園気分ですね」とか言うのが正しい飲み方です。
 世界中にファンを持つシャトー・マルゴーですが、ファン筆頭に挙げられるのは、やはり文豪ヘミングウェイErnest Hemingway(1899-1961)でしょう。彼はファンが高じて、孫娘にマルゴーという名前をつけました。Margaux Hemingway(1955-1996)は女優、モデル。日本語では英語の発音に合わせて「マーゴ・ヘミングウェイ」と表記されています。黎明期のスーパーモデルとも言えるでしょう。
 しかし、マーゴがフレイルとなんの関係があるのかはわかりません。フレイルに関わる逸話や、映画やドラマなどで彼女がフレイルを使うシーンがあるのかもしれません。一番それっぽいのは『ニュー・アメリカン・ヒーロー笑龍密使(They Call Me Bruce?)』(1982)という映画です。ブルース・リーにそっくり(という設定)の中国人青年が主人公のコメディで、マーゴも格闘アクションをこなしています。しかし劇中ヌンチャクや三節棍は登場するものの、彼女がそれを使うシーンはありませんでした。

 80年代半ばの北米在住ゲーマーにとって、Margauxと言えば多分ワインではなくマーゴではないかと思います。残念ながら命名者がどういう意図でこんな名前をつけたかまではわかりませんが、プレイヤーの大半はマーゴ・ヘミングウェイを思い浮かべたことでしょう。
 というわけで、「マーゴのフレイル」と呼んでもいいかもしれません。
update: 20001002


 
Mook ムーク  (種族)
 新種族6種の中でも最も胡散臭く、感情移入もしにくいのがムークであります。
 SF的な世界観が導入されたBCFですが、同時に登場した6種類の新種族の中でも、ムークは格別、というか独りでSF臭を放っています。「宇宙人由来の種族との噂」という説明までしっかりついています。
 そんなこんなで、ムークのモデルはチューバッカChewbaccaだということになっています。チューバッカとは映画『スターウォーズ(Star Wars)』(1977)およびその続編に登場するキャラクターで、ウーキーwookieeという種族の生物です。ウーキーの頭の「 w 」の字をひっくり返すだけで、ムーキーmookieeという単語が作れます。ここからムークmookまでの距離などないも同然。容姿の描写も極似しており、ムークがウーキーであることはほぼまちがいありません。
 さきほど感情移入しにくいと書きましたが、これはあくまで、ファンタジーRPGを期待してプレイする日本人にとっては、という限定つきでの話です。スターウォーズのキャラの中でも、チューバッカとかイウォークとか毛むくじゃら系は、案外アメリカ男児には人気があるようです。ムークも彼らにとってはイケてるのかもしれません。

 さて、普通ですとムークの説明は以上で終わりですが、日本文化圏に属する読者には、話がまだ続きます。
 雑誌(Magazine)と本(bOOK)の中間的出版物をムック(MOOK)と呼んだりしますが、全く同様に、mookを「ムック」と発音する可能性も十分あります。パソコン版からのファンだと、実際ムックと呼んでいる方も多いでしょう。
 ムックなる名前、あの毛むくじゃらの姿、とくれば間違うことはありません。我々が思い浮かべるのはただ一つ。『ひらけ!ポンキッキ』あるいは『ポンキッキーズ』に登場するあのキャラ、その名もムックであります。私はムックの相棒であるガチャピンは恐竜というよりむしろリザードマンlizardmanであるとにらんでおり、だとするとムークがムックに由来するというのも真実味を帯びてきます。

 以上挙げた三者のうち、一番古いのがムック、次がチューバッカ、一番新しいのがムークです。
 こうなると気になるのはチューバッカとムックの関係です。スターウォーズとポンキッキの間には、野田昌宏という大きな共通点がありますし、スターウォーズはWizに負けず劣らず日本文化ネタが多いので、チューバッカがムックに由来していてもおかしくありません。
 というわけで以上から導き出される一番面白い説として、

1.ポンキッキ用のキャラとして、ムックが創られた。(雪男という設定があるそうです。)
2.それをまねてチューバッカが作られた。頭の「 m 」を「 w 」に変え、ウーキー(wookiee)という種族名にした。
3.それをまねてムークが作られた。頭の「 w 」を「 m 」に変え、ムーク(mook)という種族名にした。

というのはどうでしょうか。面白くないですか?

 ムークがムックなら、種族専用アイテム(helm)の「タケコプター」とかがあると良さそうですね。破壊率0%でLITOFEITが使えるとか。私は昔から、あのムックの頭のプロペラが気になってしかたがないです。最近では有名なCMの、「むじん君」宇宙人第2種族の頭部にも同様のものが付いていましたが、彼らはムックと近縁なのでしょうか。これも気になります。
 聞いた話では、ムックはジョン・レノンJohn Lennonを、ガチャピンはポール・マッカートニーPaul McCartneyをモチーフにデザインされているそうです。だから今度ムークを使うときは、名前を「ジョン」(女なら当然「ヨーコ」)にするとか、戦闘中は毎回「イマジン」を口ずさむとかしてみてください。随分感情移入しやすくなるのではないかと思います。
update: 20000821


 
Mordor Charge モルドールチャージ  (アイテム)
 ROWに出てくるアイテムです。そもそもこの名前は、PGのマニュアルのイラストに、「冒険者の宿 モルドールチャージでお支払いできます。ADVENTURERS -INN- Mordorcharge Accepted」と書いてあるのが初出です。要するに架空のクレジットカードの名前なのです。
 モルドールMordorとは、『指輪物語(the Lord of the Rings)』(1954-55)に登場する地名です。昨今ではホビットhobbitとかミスリルmithrillとか、本当に普及したものしかやりませんが、昔はあらゆるファンタジー物が指輪ネタを平然とパクっていました。このアイテム名はその名残と言えるでしょう。実際のところ、トールキンJohn Ronald Reuel Tolkien (1892-1973)が商標登録していたら、今ごろ大変なことになっていたに違いありません。
update: 20001120


 
Murasama Blade ムラサマ  (アイテム)
 Wiz最強剣と言えば村正Muramasaですが、最初のApple II版では伝説的な「ムラサマ・ブレードMurasama Blade」という名称で登場します。最近のNP版、PS版などでもこの名前は復活しており、ご存知の方は多いでしょう。
 伝承によると、Murasamaという名前は「村正Muramasa」と「村雨Murasame」を混同した結果生まれたということになっています。「村雨」自体がそもそも「村正」から採った名前らしいので、まあ外国人だったら間違うこともあるでしょう。むしろ当時アメリカ人が「村正」だの「村雨」だのという言葉を使っているということ自体が驚きです。そこまで知識のある人がこんな初歩で間違えるとも思えないので、もしかしたら故意に両者を混合して作った造語だったのかもしれません。ただし後の作品ではMuramasaに訂正されているので、どちらとも判断しかねます。

 PC用のレースゲーム『Grand Prix Legends』(1998)は(以下GPLと略記)、1967年のF1を再現した本格レースシミュレーションです。このゲーム、他の会社は実名で登場するのですが、なぜかホンダHondaだけはムラサマMurasamaという名前になっています。世間では実名使用の許諾が出なかったのだろうと言われていますが、ここは穿った見方をするべきでしょう。Murasamaなどという単語はGPLとWizにしか使われていないのですから。
 GPLと同じ頃のF1の世界を描いた映画で、『グラン・プリ(Grand Prix)』(1966)という作品があります。マニアが撮ったマニアのためのカーレース映画として有名なので、GPLの製作スタッフが見ていないということは考えられません。この映画も、他の会社は実名で登場するのですが、なぜかホンダだけはヤムラYamuraという名前になっています。これは許諾云々よりも、社長の矢村伊造Izo Yamuraという架空のキャラクターが登場することの方が問題だったでしょう。
 さて、ジェームズ・ガーナーJames Garner(1928- )演じる主人公ピート・アロンPete Aaronは、事故でBRM(British Racing Motors)チームを追われます。しかし矢村社長に最強のヤムラエンジンを載せたマシンを与えられ復活、最終戦モンツァで優勝してチャンピオンになる、という話です。そしてこの矢村社長を演じるのが、他でもない三船敏郎(1920-97)です。
 これはどう考えてもPAPYRUS社の製作スタッフにWizのファンがいて、「Mifune = Samurai = Murasama Blade」とこじつけたとしか思えないのですが。どうでしょうか。

 さすがに日本の作品には「ムラサマ」などというカッチョ悪い誤った日本語を使っているものはないようです。が、だからといってこのアイテムが日本人の心に影響を与えなかったわけではありません。
 村正は「妖刀」と呼ばれ、明治維新から百年経っても悪役扱いでした。時代小説やマンガに登場する村正は、やれ人の生き血を吸うとか、やれ手にした人を狂戦士に変えるとか、あるいは逆に神仏妖怪魔物などをも斬れるとか、ものすごい設定がついています。映画の世界でもこの雰囲気は踏襲されているようです。村正は悪人Evilやダークヒーローが使うもので、善人Goodは正宗などクリーンなイメージの刀を使います。
 ところが日本のRPGに登場する村正は、単にサムライが装備できる最強の刀というに過ぎません。西洋風ファンタジーにサムライが登場するという根本的な点も含め、これはWizの影響が大きいと言えるでしょう。
update: 20010820


 
Mustard Mace マスタード・メイス  (アイテム)
 BCFに登場するメイス。
 マスタードmustardもメイスmaceも毒ガスの名前です。正確に言うと、マスタード・ガスは糜爛(びらん)ガス、メイスは催涙ガスです。このアイテムはSTINK BOMBが使えるようですが、どちらかといえばマスタード・ガスが出ているのではないでしょうか。BCFにはBLINDING FLASHという魔法が別にありますし。
update: 20001120


 
No-see-um ( No-see-um Swarm ) ノーシーアム  (モンスター)
 KODに登場する昆虫です。
 no-see-umとはヌカカpunkieと呼ばれる蚊の、北米での別名です。no-see-umとは、インディアン(ネイティブアメリカン)風に「それ・見る・ない」という感じの言葉です。この蚊は小さくて見えない、という意味です。本当にこう言った原住民がいたのかどうかは知りません。
update: 20001120


 
Orb of Llylgamyn リルガミンの宝珠  (アイテム)
 LOLでは冒険の目的だった重要アイテム。が、HOMでは序盤であっさり手に入ったりします。
 まず、orbとは球体のことで、狭義には「宝珠」という意味があります。この場合、球体の上に十字架のついた形状のものを指します。しかし、表向きWiz世界はキリスト教世界ではないので、問題のアイテムには十字架は付いていないかもしれません。宝珠とは王権を象徴するもので、ヨーロッパの王様の肖像画などを見ると、よく左手に持っている姿が描かれています(右手はsceptre/scepter「笏」を持っていることが多いです)。イングランド王の宝珠が一番有名でしょうか。ちなみに元になったラテン語orbisは「円、輪」といった意味で、どこかで次元を1つ間違えてるようです。まあ、我々も普段「立方体」のことを「四角形」とか言ったりしますけど。
 次にLlylgamynですが、これは架空の地名なので、特に意味とかはなさそうです。ただ語感としては、非常にケルト的、正確にはウェールズ的だ、というのはあります。語頭で「 l 」がダブっていたり、「イ」の発音に「 y 」を使っている辺りがそうです。ウェールズの地図を見てもらえば、実際このような地名がうじゃうじゃと書かれていることに気付くでしょう。ウェールズ語でも依然Llylgamynに意味はないようですが、Llynamglyn「峡谷に近い湖」とか、Llangwyn「白い教会」とか、少しごまかせば地名っぽくなりますね(ウェールズ語は自信ないのでつっこまないでください)。好きな人にとっては、ウェールズ大公ルウェリンLlywelynはよだれもの、保険業者団体のロイズLloyd'sとかは、名前だけで震えが止まらなかったりするわけです。
 Llylgamynの他にも、GnildaとかHrathnirとか、KODで登場する固有名詞は、いかにもヨーロッパ的な、アメリカにはなさそうな綴りです。アメリカ人は「んんー、ヨーロピアンな雰囲気だ」と思うんでしょう。一般的センスの日本人が、「各務原って奈良っぽいな」とか「四条畷って京都だよね」と言うのと同じです。

 さてLOLでは、Orb of LlylgamynにはOrb of Earithinという別名があり、Orb of Mhuuzfesという贋物が存在します。申し訳ないですが、EarithinもMhuuzfesも、意味も由来も何もわかりません。アナグラムでもなさそうです。「Earithinの方がMhuuzfesより本物っぽいかな」とは思いますが、それだけです。「イアリシンの宝珠」、「ミューズフェスの宝珠」(この2つはFC版、SFC版の日本語表記)と訳すと、ちょっとMhuuzfesの持ついかがわしさが削がれるかな、という気はします。その点「ムフーズの宝珠」はいい感じですが、Orb of Earithinを「大地の宝珠」(この2つはPS版、SS版の日本語表記)と訳していいのか、よくわかりません。多分だめでしょう。
 まず関係ないでしょうが、イングランド東部にEarithという地名があります。これは『ファイナルファンタジーVII(Final Fantasy VII)』(1997)に登場するエアリスAerithというキャラクターの名前について調べていたときに偶然発見したものですが、この辺を考慮して「エアリスの宝珠」もいいかと思いました。
update: 20000710